リアリストでロマンチスト京都一ファンキーな不動産屋が町のヒーローの一人になるだろうな、というお話

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川端 寛之。

1977年生まれ。京都生まれ京都育ち。二児の父。2000年大学卒業後、地元京都の不動産会社に就職。2014年独立。株式会社川端組 代表取締役組長となる。従来の不動産のイメージにとらわれない物件情報を発信するサイト『KAWABATA channel』の運営、賃貸や売買物件の仲介、不動産活用やリノベーションの企画を行う京都一ファンキーな不動産屋。


「ここらへんの地面をできるだけはつって(コンクリートをはがして)土や緑を取り戻して、ここの大家さんに見せてもらった50年前のここの写真の景色に近づけたいんですよねぇ。」

大家さんに見せてもらった50年前の写真が今とどれだけ違うか説明してくれる


身振り手振り交えて嬉しそうに話すこの赤いつなぎにベストをまとった男性が、今回の主人公である川端さん。京都では有名な不動産屋さんの川端さんその人。
 

川端さんは、相手に伝わりやすいよう常にオーバーアクションで面白く話す


多くの人が思い描く『不動産屋さん』とはまた違った風態をしていることに誰も異論を挟まないだろう。実は彼と初めて出会ったのは2015年11月に大阪で開催した不動産イベントだった。「どうもー!はじめまして!京都一ファンキーな不動産屋、川端チャンネルの川端です!」そう言って私の眼前に現れたおしゃれなスーツに身を固め髪をキメ、名刺を差し出す当時の彼は些かうわ滑っているようにさえ見えていた。ただ、今日みる彼の姿はまさに堂にいったもの。ちなみに現在の彼は現場ではツナギを身に纏い、普段不動産業に従事する時はサルエル姿。そして当然のようにいつもちょんまげ頭。初めて会ったあの日にくらべて落ち着き、自信に満ちている印象を受ける。


 

積み重ねてきた実績が彼の自信を育ててきたのだろう

 

「自信…、は分かりませんけど、ほら僕って結構ビビリやないですか?それでも色々やっていくうちに、起こることがちょっとずつ読めるようになるというか、その対処もできるようになるし…そういうことちゃいますかね?」
そう、そういうこと。それを指して『自信』と人は言うのでしょう。そんな不動産屋なはずの彼がなぜツナギを着て現場作業をしているかというと、彼と彼の仲間たちが新しい挑戦に挑んでいるから。
 

お施主さんも川端さんも施工チームの一員。お茶休憩では共に寛ぐ。


「自分で考えてやると決めたことなんで、挑戦とは思ってませんけどね。」そう言って笑う彼にとっては挑戦ではないのかもしれないけれど、不動産業界のことを少しでも知る人間からすると挑戦と言ってなんらおかしくないことに取り組んでいる。

プロジェクトの名前は「A HAMLET」京都市内中心部からだと車で約五十分はかかる亀岡市並河駅にほど近い場所で行われている。(電車だと京都駅から快速で約二十五分)

<A HAMLET map


ここは屋根瓦屋さんを本業で営む山本さんが大家さんをされている古い集合住宅地。この古くなって空き家も多くなった集合住宅地をリノベーションして魅力的な場所に再生させようというもの。
 

30棟ほどある長屋のうち13棟を数期に分けて工事を進める計画

 

初めてこの場所を見つけた時に川端さんは「見つけちゃった、出会っちゃった!と思った」と言う。
「よく残ってたよね。って。それに尽きる。こういうところは、だいたい再開発されてしまうしね。この近所で別の案件を引き受けていて、たまたま歩いていたら見つけて、その時一緒に歩いていた4、5人の友人たちにごめんやけど先帰っててーってお願いして集落をぐるりとひと回りして写真を撮って帰ったんですよね。それでまぁその日は時間もあんま無かったんで日を改めてピンポンを押して、はじめましてって挨拶して…」

ーえ、電話でアポもとらずに行ったんですか?
「ええ、通りに面した真正面に連絡先が書いてあったからね。ああ、これはいける口やなと思って。」
 

よく見ると正面の建物の壁に川端さんも見つけた連絡先が書かれた看板が


ー私の目にはかなり大胆な行動にうつるのですが、訝しがられませんでしたか?
「最初お母さんが出てきはって、最初はなんやこの人みたいな感じでしたけど、不動産屋ですって言ったら、お客さんを紹介してくれはるんやろなって感じに思わはったみたいで物件の説明してもらいつつ、全体をぐるっと巡ったってのが最初ですね。それで後日に大家業を引き継がれてる息子さんに繋いでもらってそこで2時間お話させてもらったって感じです。」

ーそこで息子さんとカンカンガクガク熱く語ったってことですか??

「最初はほとんど2時間僕がずっと喋ってたって感じでした。ここの価値みたいなことを説明して琥珀街みたいなこともできるんですよ、っていう不動産の活かし方というか選択肢の提案みたいなことをした感じです。」
琥珀街とは、このA HAMLET以前に大阪の吹田市で川端さんが企画されている集落の再生プロジェクトのことだ。
 

山本さんのお母さんがしてくれたように丁寧に案内してくれる川端さん


ー大家さんである山本さんたちは今の不動産業界に明るいわけではなかったんですか?
「うーん、そうですね、裏にもマンションを持ってはるんですけど、そこまで事業としてガチガチにやられている不動産オーナーって感じじゃなく、いわゆる地主さんってノリでした。」

「山本さんから聞いたんですけど、僕が来て提案するまでは、比較的新しい建物の並ぶ列の部屋を、他の不動産屋さんとかに求められるまんまクッションフロアー敷いて壁紙毎回替えてって感じのマンションみたいな内装で綺麗にしていって、古くなってきて人があんまり入っていない列はもうあんまり触らないで将来的には建て替えて行こうかなぁってぼんやり考えてはったらしいんです。正直立地とかでは勝負できないんで、安く広く、小綺麗でっていう方向に向かってたって感じでした。」
 

入居者が代わるたびマンションライクな内装を替えていた


ーあの辺りが、立地で勝負できないっていうのは駅からの距離って話ですか?それとも亀岡全体がってことも含めてですか?
「うーん、そうだと思います。だから普通寄りにしないといけない、大衆に価格競争で選ばれるようにしないといけない、と多くの大家さんは思わはる。京都とかやとどうしても周辺エリアはそうなっていくんですよ。右京区の端っこの方とか亀岡の辺りとか特に。そんな中で一部の大家さんがリノベ物件にしようってなって、いい感じの物件が周辺部にできるわけですよね。(逆にほっといてもお客さんがつく率の高い中心地にはリノベ物件が少ないってなる。)周辺部でリノベ物件なんかの物件的特徴でお客さんに選んでもらうんじゃなく、ただただ価格競争をしていくと、最終的には、収益があがらなくなって、その建物自体がなくなってしまうんですよ。」

その後に建つのは、いわゆる綺麗で便利で効率化されたマンションや集合住宅がほとんどだろう。建て替えようにも建て替えられないで諦める大家さんも出るだろう。

「マンションは建ってもええと思うんです。でも、選択肢はいっぱいあった方がいい。みんながみんな同じ価値感で物件を選んでいるわけじゃないじゃないですか?僕らが作ってきたり貸してきた物件って、そうじゃない物件がいっぱいあったわけですよ。」
 

A HAMLETの大家でもある山本さん



川端さんは、独立する以前から京都で有名な不動産屋さんでリノベーション物件やさまざまな個性ある物件を取り扱ってきた実績がある。

「例えば、A HAMLETの大家さんである山本さんは家業が瓦屋さんで、山本さんのおじいちゃんたちがこの土地で土を採取してそれを瓦や瓦の下に敷く葺き土なんかにしていったんです。それで今回改装の際に出てきたその葺き土なんかをまた細かく砕いて練り直して、壁土にしたり土間の三和土(たたき)の中に入れたりしてて、このまちの今までのストーリーに自然なやり方でやりたいんです。」

 

土を大量に採取した為、敷地全体がフェンスの外を走る道路から一段下がっている



ー確かに、今の時代で言う循環型というモデルでえすよね。
「よくそういう風に言われるんですよね。自分たちは、世の中でこう言われているとか、こういうのが流行っているとかとは関係なく、僕らはこのまちのストーリーに沿っていて、自分たちが見たいもんや面白い、かっこいいと思うこと、住んでみたい家とかを話して考えて作っていってるだけなんで。それを周りの人に話すと、そうだよね。それって、つまり今で言うところのこういうことだよね。って、言われたりしますね。」
 

もともとここの土地の土だったものが屋根になり、さらにそれが壁や土間になる



驚くことに、この物件は物件の完成図を明確にしないまま現場合わせで企画を進めているという。

「そうですね。普通、この規模やと最初に全部決めてから作業が開始される場合がほとんどなんやと思います。でも、今回はそうじゃなくって、大家さんも設計、施工チームと一緒に現場で動きながら、考えながら、作っていくことにしてます。それに、今後ここに住んでくれる人たちとも話しながら作れるといいなと思っています。」

 

カメラを向けるとおちゃらける今回の施工チーム「々(ノマ)」



ー確かに、家づくりに参加できることで住人は物件に愛着を持ち、退去率が下がる事は比較的広く知られるようになっていることですが…。
「それもそうなんですけど、とりあえずは、解体から入ってみて、床板剥がしたら根太がなかった!とか、この壁は後付けやったわ!とか、一旦、剥がしてみて、見て、触れて、考える。だから、最初に全部は決めないでおこうって。あと、ストーリーというかな…山本さんのおじいちゃんの時代からこの土地で続くこの物件や集落の物語を、住む人も周りの人も僕らのことを気にしてくれている人もみんな一緒に未来に紡いでいくっていうのが大事な気がするんですよね。その為にはいろんなもんを取り込んで行かんといかんと思うんですよ。近所でご飯食べてる時に聞く話とか、山本さんの思い出とか、このまちに今住んでいる人たちとの他愛もないやりとり、そんなんも含めて全部。そういうものを大事にしたいなと。」
 

施工チームが寝泊まりする部屋


本来、不動産屋は不動産にお客さんをつけるのが商売だ。商品開発として不動産を作ることはあっても、ここまで手のかかる商品を作るだけでも大きなリスクと言えるだろうに、なんと川端さんは他の施工チームと同じように現場に住み込んで施工にも携わっているという。

「そんなん、僕が“みんなでストーリー作りましょう” “さぁ、今、情報やウェブやSNS全盛の世の中に足りないリアルを追求して、全員施工でやっていきましょう!”言うてて、施工組は住み込みでやります!言うるのに、じゃぁ後は頑張ってね。僕だけ帰ります、って言いたくないですやん!正直、行く前は嫌でしたよ。ただでさえ慣れてない現場で働いて、疲れていたとしても、寝るのもみんなと一緒ですしね。でも、プロジェクメンバー間の解像度を上げようとしたり、よりいいものにする為にもリアルを追求しようとしたら、この方法しかないと思ったし、素人の僕が一人追加されようともですよプロジェクト自体がうまいことできるできないに関しては心配してませんから。」
 

内装の解体にも参加したのでどこの柱がどうだったか、床がどうだったか、こと細かに覚えている



チームの皆を信じているからか川端さんは豪放磊落に笑い飛ばすが、それ以外にも本業のことや、家族のことなど気になってしまう。

「通常の不動産業は土日にやって、平日はずっとA HAMLETでしたね。うっかりお休み作るん忘れてましたわ。それでも家族は別にええんちゃうん?って感じでしたね。」
 

本当に楽しそうによく笑う



照れからかはにかみながらはぐらかしにかかりあまり本人は話そうとしなかったが、家のことやお子さんのことも奥様と連携してきちんと行っているらしい。しかし、そうまでして決して簡単ではない、大きな利益が見込めるわけでもないだろうこの事業にかける情熱はどこからくるのだろう。

「一番かっこよく言うと、救いたいってこと。まちや建物、ここにしかない価値を守りたい残したい、そういう系の気持ちですね。そんでオーナーさんにはこの価値に気づいて欲しい、みたいな?そんときにはお金のことはみて(考えて)ないですね。ここが良くなってちゃんと残ってってなると面白いね!っていうのしか最初は考えてない。」
 

順次増改築、改装がされてきたので後付けの浴室の形も様々



「あと、よく言ってるんすけど、集まってる意味ってすごいんですよ。いろんな地方で町の勇者みたいな人が場所を買ったり借りたりして色々な人に来てもらおうとして努力してはるけど、村とか町の人がその周辺の物件を貸さへんとか、売らへんとかって壁が絶対出てくるんですよ。それをハムレットはワンオーナーであれだけの数を持ってるってのは凄く強い。マンションとかでもそうやけど、集合してる強みをどこも発揮してないから、あそこが化けた時に足し算が掛け算になるってことに誰も気づかないんですよ。」

 

コンクリをはつり土に返す計画も、企画を進めるなかで生まれてきた

 

「例えば、普通は、家賃5万円が10組入ったとして月50万円の価値しかないと思ってる。でも、琥珀街でもそうやけど、その10組が横のつながりを作って中で何かが起こっていくと人が出ていかなくなるんですよね。退去したくないし、かつ今度空いたら入りたいって人がやっぱり出てくる。琥珀街の場合は町に住んでる街人が自発的にインスタアカウントを作って発信してるくらいになってて、そこまでいくともう価値が掛け算になっていくんですけど、ハードとしての建物だけの町だけの価値だけじゃないものが出てくる。そういうことを大家さんに提案しています。」

 

本業の為の資材置場を庭にする構想もあるとか


ーしかし、日本国内を見渡すと、同様の集落は沢山あるだろうし救いたいで救っていて果たして身が持つのでしょうか?

「他にもあると思うんですけど、出会わないですね、なかなか。そういうケースがあんまりないから、大手のハウスメーカーがまるっと建て替えしたり、商業施設になったりとかくらいしかないんちゃいますかね?さっきも言ったようにずっと選択肢を増やしたいって常々言ってるんやけど、それは借り手にだけ言えることじゃなく、貸主、大家さんにも言えることだろうと思うんですよね。資産としての活用方法の選択肢、みたいな。」

ーなるほど、まさに今私たちが社会として目指す豊かな暮らしの一つの方向は『多様性』であり、それはつまり『多くの選択肢を維持できること』とも言い換えることが出来ますよね。

「そういうもんなんですか?今、ここで僕らにできることは、工事でできるだけ廃材を出さずに、素材を再利用して、循環させる。かっこよくね。あと、この亀岡のA HAMLETの辺りに昔はよく朝霧が出てたらしいんですけど、できるだけ地面のコンクリートをはつって、土や緑を取り戻す。そんな環境にしていくことが生き物にとって、自然なんじゃないかと、そして、僕ら人間も生き物としての人間らしい生き方を取り戻せるんじゃないかな?って思ってやってます。」

コンクリをはつった後に敷く芝生は既に用意されている

彼や彼らは実務家なのだろう。頭で理屈を考えて動けなくなるよりも、現場で動き、肌で感じて、考え、作っていく実務家。リアリスト。もちろん、ビジネスとしての側面には戦略家としての才覚も見て取れる部分が多大にあったけれども、特筆すべきはこの実務家、リアリストとしての側面が一つ大きく。それとそれを支える極端な人を巻き込むセンス。そして、のっかってみても良いかな、騙されてみてもいいかなと思わせるロマンチストな側面。その両方を持ち合わせていることだろうと。

このインタビューでまんまとノセられてしまった私も、難しく考えてばかりいないで、彼らの作業に参加しようと思っている。もし、この文章を読んで、私と同じように思う人がいるのなら、京都府亀岡市のA HAMLETで会いましょう。ちょんまげの人の背中を追って作業しましょう。









<KAWABATA channel>

https://kawabata-channel.com/

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この記事のディレクター

アーティスト/マドリスト/プランナー/うどんの人

森岡 友樹

ちょっとおせっかいなくらいでちょうどいい。

#京都 #亀岡 #不動産 #まちづくり #地域活性 #移住 #村 #集落

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